何か素敵なことがここにはありそう。〈オンネリネン〉
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清澄白河で夕食に向かう途中、あるお店の雰囲気にふと立ち止まった。閉店後の店内。白塗りの木の壁や大きな窓ガラスの奥に、ほんのりと浮かび上がる毛糸や雑貨がとても気になる。何か素敵なことがここにはありそう。夕食会場に到着すると、先に着いた友人が、さっき雑貨屋さんで買ったというステンレスポットを嬉しそうに見せてくれた。そのお店こそ、窓を覗き込んだ「オンネリネン」だった。今回はオーナーの瀬良田さわこさんにお話を伺った。
冒頭の話を瀬良田さんにすると、「よく窓ガラスに手やお鼻の跡が、ぴっ、ぴっ、とついているんですよ」と笑う。大阪出身の瀬良田さんがお店を始めたのは、旦那さんの転勤で静岡に移り住んだ約20年前。理由は「好きなものを買えるお店がなかったから」
4歳の息子さんがいる「資格も経験もない」母親であった瀬良田さんは、買い物をしたくても、パートに出ようにも、お店そのものがないことに愕然とし、それなら作ろうとお店を作る。それから5〜6年後、今度は東京へ引っ越すことになり、実はその時、「東京にはお店がたくさんあるだろう」と、お店をやめようと思った。だが、家族の強い勧めもあり、続けることに。当時、清澄白河といえばお寺やお墓のある街で、お店を開くようなイメージはなかったが、旦那さんの通勤に便利な電車の始発駅であり、住居や、息子さんの小学校に近い場所を探し、ここに出会った。以来16年。コロナ禍では、ここが家以外の貴重な居場所で、今も朝のひとり時間に朝焼けを眺めたり、大通りの向こうの清澄庭園の四季折々を楽しんだりしている。
4歳の息子さんがいる「資格も経験もない」母親であった瀬良田さんは、買い物をしたくても、パートに出ようにも、お店そのものがないことに愕然とし、それなら作ろうとお店を作る。それから5〜6年後、今度は東京へ引っ越すことになり、実はその時、「東京にはお店がたくさんあるだろう」と、お店をやめようと思った。だが、家族の強い勧めもあり、続けることに。当時、清澄白河といえばお寺やお墓のある街で、お店を開くようなイメージはなかったが、旦那さんの通勤に便利な電車の始発駅であり、住居や、息子さんの小学校に近い場所を探し、ここに出会った。以来16年。コロナ禍では、ここが家以外の貴重な居場所で、今も朝のひとり時間に朝焼けを眺めたり、大通りの向こうの清澄庭園の四季折々を楽しんだりしている。
お店にあるのは、瀬良田さんのお眼鏡に適ったものばかり。それが絶妙にいい。例えば、パン切りナイフ。10年以上、パン切りナイフを探し続けてきた筆者はついに出会った。刃先から柄まで一体成形のフォルムは実に美しく、手入れしやすく、抜群に切れ、しかも適正価格。瀬良田さんは「売りっぱなしにしたくない」という気持ちで、生活者の視点でものを選んでいる。このナイフも「15年ぐらいは使えると思います」。パンツにしてもそうだ。女性ものにしては大きなパンツを手に、戸惑いがちに眺めていると「随分布が多くてびっくりするでしょ。干すとハンカチみたいよ。でも、自分の履くズボンってこんなに大きいのに、パンツだけが小さすぎない?ぎゅーって締め付けてない?」。確かに。そこで一枚購入してみたら、もう手放せない。「みんな今使っているものに、なんかモヤモヤしているんでしょうね」と瀬良田さん。情報を鵜呑みにしない人たちが瀬良田さんのセレクトにマッチするようだ。20年来、ずっと仕入れ続けている菜箸があると思えば、どんどん移り変わるものもある。できればゴミにならず、日々の暮らしに馴染むものを探している。
ナイフやパンツのような日本製品を応援しつつ、良いものは日本産だけには限らない。オンネリネンの看板商品は実は毛糸。毛糸は北欧のものが中心で色は約60色、在庫は約1500玉。今は柔らかく細い糸が主力。というのも、太い毛糸で編んだものは温暖化の今、使用期間は2カ月と短い。これは瀬良田さんが厚いセーターの着用時期を記したメモによる。そこで季節を問わず、洗濯機で洗えるリネンやウールの毛糸を、簡単に編める編み物レシピと合わせて提案している。
今季の編み物スカーフは「クレソンサラダ」。好きなマッシュポテトとクレソンのイメージで、鮮やかなグリーンが心を浮き立たせる。毛糸にしても「売りっぱなし」にはしたくない。ネットや本屋には編みもの情報が溢れ、毛糸はどこでも買える。でも、それを買って最後まで編めているだろうか?取材中も、4年前に毛糸を買ったが途中で編み方が分からなくなったと言うお客さまが、コロナ禍を経て訪ねてきた。「時間が経ったから、もう教えてもらえないかと思ったんだけど」と話すその女性に、「いつでも聞いてください。悩むほど上手になるんですよ」と瀬良田さん。編みものは、自分で問題を解かないと身にならないのだ。独学の瀬良田さんのレシピはまっすぐ編むだけなど、特別なことはないと言うけれど、「家族に褒められた」など、お客さまに大好評。シンプルに良い素材とレシピで、ずっと古びない素敵なものができる。
今季の編み物スカーフは「クレソンサラダ」。好きなマッシュポテトとクレソンのイメージで、鮮やかなグリーンが心を浮き立たせる。毛糸にしても「売りっぱなし」にはしたくない。ネットや本屋には編みもの情報が溢れ、毛糸はどこでも買える。でも、それを買って最後まで編めているだろうか?取材中も、4年前に毛糸を買ったが途中で編み方が分からなくなったと言うお客さまが、コロナ禍を経て訪ねてきた。「時間が経ったから、もう教えてもらえないかと思ったんだけど」と話すその女性に、「いつでも聞いてください。悩むほど上手になるんですよ」と瀬良田さん。編みものは、自分で問題を解かないと身にならないのだ。独学の瀬良田さんのレシピはまっすぐ編むだけなど、特別なことはないと言うけれど、「家族に褒められた」など、お客さまに大好評。シンプルに良い素材とレシピで、ずっと古びない素敵なものができる。
瀬良田さんはよく喋りよく笑う。つられてこちらも喋る。そのやり取りで商品や日々の暮らしのことをフィードバックしている。その上で、自分が好きかどうかの感覚を大事に「ずっと使える、ちょうどいい」ものを、そして「これがあるだけで、私ちょっとこれからいいかも」と思えるものを手に入れて、お客さまに「楽しい気分でいてほしい」。瀬良田さんにとってお店づくりは、「誰かの真似ではなく自分の中から生まれた、世界にまだないものを提案したり、売ったりするのが楽しい」のだそう。同じものでも、瀬良田さんの手にかかると自由な発想で素敵に輝き始める。
家事の合間に、お店のことをやる。「まずは生活が中心にある」と瀬良田さん。日常は転がり続け、錆びつく暇はない。「オンネリネン」はフィンランド語で「ハッピー、幸福」を意味する。お店を「いつまで続けるのかしら」と口にするが、瀬良田さんにハッピーを分けてもらいに来るお客さまがいる限り、当分はやめられそうにありませんね?
家事の合間に、お店のことをやる。「まずは生活が中心にある」と瀬良田さん。日常は転がり続け、錆びつく暇はない。「オンネリネン」はフィンランド語で「ハッピー、幸福」を意味する。お店を「いつまで続けるのかしら」と口にするが、瀬良田さんにハッピーを分けてもらいに来るお客さまがいる限り、当分はやめられそうにありませんね?
(写真と文 篠田英美)
オンネリネン
東京都江東区白河1丁目1-2電話/03-6458-5477
営業時間/火〜土 11:00~18:00 定休日/日・月
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