乾燥と湿気とお肌

 乾燥と湿気、気候や風土によって湿度は大きく変化します。もちろん自然の恵みですから、良い物を沢山もたらしてくれますが、問題になるのはそれが人間の生活と合わなかった時です。例えば、湿度が高くて食べ物にカビが生えると腐ってしまいますが、同じ真菌類の麹はおいしいお酒や味噌を作ってくれます。体に真菌が入ると水虫やカンジダの元になってしまいます。我々が乾燥と湿気の影響を最も感じるのは、乾燥肌やカビ、蒸し暑さや屋内の結露などの時ですね。今回はお肌と乾燥について考えてみましょう。

まず、お肌について簡単に復習を。
皮膚の構造は体の中から皮下組織・真皮・表皮の3層になっています。体の表面を覆う表皮細胞のほとんどは5つの層から成る角化細胞というものです。その角化細胞の一番外側にある細胞を角質細胞といい、これは順次はがれて落ちていきますが、たまると「垢」と呼ばれます。お肌では脂腺(皮脂腺ともいいます)から体に必要な皮脂と呼ばれるあぶら分が、汗腺から水分(汗)が常時分泌されています。これらは普段から一定の量分泌され、毛や皮膚と共に外部からの様々な影響から体を守ったり、体内の状態を維持してくれています。ちなみに手のひらや足の裏が湿っている人を脂性(あぶらしょう)といいますが、手のひらや足の裏に脂腺はないので、湿っているのはあぶらではなく汗のせいです。
ところが寒くなると空気が乾燥し、体が冷えて血液循環が悪くなり、皮膚の栄養状態が低下して、皮膚表面の保護ができなくなってしまいます。脂腺が存在しない指先やかかとは、さらに乾きやすく、ひび割れや炎症を起こしやすくなります。この、皮脂と汗の出具合は体質や環境に左右されるので、乾燥からお肌を守るためには環境に合うように、からだ全体のコンディションを調整しなければなりません。
乾燥に対して、最も端的な対処法は、クリームなどで脂分を表皮に塗ることですが、皮膚の表面は水分と脂分が一定の割合で混ざるように自動調整されますので、むやみに脂分を増やすと過度に水(汗)が出てきます。従って、一度に沢山塗るのではなく、薄く頻繁に、根気よく塗る方が皮膚表面のコンディションを保ちやすいでしょう。
血液の循環を良くするためには、血管とそれを取り巻く筋肉などを温めたり、適度なマッサージで刺激することが必要です。ただし、その際むやみに皮膚を刺激しないよう気を付けてください。顔なら、舌を使ったり、頬をふくらましたり、表情筋と言われる顔の筋肉を良く動かして、内部から刺激することも大切です。
体の場合、入浴時の習慣も大きく影響します。例えば洗体時、先体タオルでゴシゴシこすり過ぎると、必要な量の皮脂膜や角化細胞まで剥がしてしまいます。はがれた皮脂膜が回復するまでには3時間ほどかかりますので、その間に体が冷えてしまうと、外部の環境から影響を受けやすくなります。角質化した皮膚が増えると、それは垢(あか)やフケになりますが、冬場などはそれを気にしすぎてあまり強くこすり過ぎないようにする事が、乾燥から肌を守るコツです。
皮膚は加齢とともに水分が失われますが、お肌の水分は表皮の下の真皮に含まれています。厳密にいうと、真皮の中の基質というゼリー状のものがその本体です。その基質を閉じ込めておくための壁がヒアルロン酸、柱はコラーゲン、それらを止める釘の役割を果たすのがエラスチンといいます。加齢とともにコラーゲンやヒアルロン酸が減ってくると、お肌は基質、すなわち水分を保持できなくなり、乾燥してきます。このヒアルロン酸とコラーゲンは、食べ物では補えないと言われています。食べるより、外側から塗りこむ方が良いという説もありますが、外用では、塗り続けなければ効果を維持できないという問題があります。
やはり一番良いのは乾燥や湿気に強い体質になることです。そのためには、皮膚に良いと言われているビタミン類(特にAまたはベータカロチン、B、C、Eなど)、脂肪、タンパク質を含む食物をきちんと摂り、全身の新陳代謝が円滑に送られるように、十分な睡眠や適度の運動を心がけ、入浴で血液循環を良くするという日常の習慣が大切です。乾燥によりお肌が荒れてきたと感じたときは、まず生活習慣から見直すことが、なにより大切でリーズナブルです。