うつ
うつ病は精神分裂病(現在は統合失調症)と並んで2大精神病と呼ばれています。精神科の学会の分類では「気分障害」と呼ばれるものの中に含まれます。「うつ」にも種類があって、細かく調べるとさまざまな呼称の物が出てきますが、大きく分ければ「単極性」のうつ病と「双極性」のうつ病に分かれます。簡単に説明しますと、いわゆる「うつ」の状態には波があって、気分が落ち込んでいない時はほぼ性状の状態に戻っているのが単極性、うつでない時はそう状態(うつ+そう)が双極性です。そう状態は、うつとは逆の状態、つまり、落ち着きなく、いつもハイテンションで衝動的な行動に出やすい状態を指します。
最近は芸能人でも、自分がうつであったことをカミングアウトする方が増えてきて、社会にも随分受け入れられるようになってきました。そのおかげで、患者さんの社会復帰も早くなり、周囲の理解を得られて重症化もしにくく、外来治療もしやすくなってきています。その反面、精神科や心療内科の専門医にかかる前に、一般内科などの非専門医の安易な治療で、重症化・薬の乱用・最悪の結果(自殺など)に至ってしまう事もあるようです。
うつの概念は社会に浸透してきていますが、まだまだ誤解もあるようです。特に、うつの状態になるはっきりした原因があるのとないのとでは大きな違いがあります。
症例①勉強が嫌いで教科書をひらくと気分が暗くなり、何も手につかない。学校へは行きたいが、授業中は何も頭に入らない。得意のバスケをしている時は、集中できて、友達とも話せる。受験期が来て、バスケ部も引退したら、あまり笑わない暗い人間になってしまった。「元気出せよ」と肩を叩いたら、「早く大学に入って思い切りバスケをやりたい」と言っていた。
症例②成績はあまりよくなかったが、バスケが得意で、学校でも友達が多かった。ところが、いつの間にか勉強はもとより、バスケも全くしなくなり、学校にも来ない。ほとんど外出せず、たまたま街で見かけた友人が声をかけた時も、返事はおろか顔も見ようとしなかった。なぜそうなったか、誰にもわからない。
少しわかり易すぎますね。①の場合勉強が嫌いで、好きなバスケができなくて暗くなったというはっきりした原因がありますが、②の場合ははっきりとした原因もなく、何もできない状態になっています。①は性格や習慣、あるいはわがままから来るものでうつ病というより「うつ状態」に近いです。しかし、②は原因不明で、しかも好き嫌いやわがままに左右されていませんので、早く精神科や心療内科の専門医に見せた方が良いでしょう。何か人生の中での大きな事件が起こり、その後うつ状態になったという場合、その事件が原因でうつになったのか、もともとうつ病の患者さんが、その事件を機に「発症」したのか、専門医は短い目と長い目を持って観察してくれます
いずれにせよ、社会生活を営めるかどうかは精神科的医療の診断・治療の大きなポイントとなります。専門医は短い目と長い目を持って観察してくれますので、個人で勝手にいろんな判断をしたり、状態が良くないのに非専門医しか受診しないのは治るどころか病状の悪化を招きます。
うつの患者さんを良い状態に導くには、何より専門医による的確な診断・治療が必要であることを忘れないでください。