体を温めるという事

 最近、低体温の弊害がいろいろなところで取り上げられています。体温は何度くらいが適正かというのは専門家のご意見を参考にしていただくとして、だいたい36.5℃くらいがよろしいようです。

 体を冷やすと、風邪をひき、お腹をこわし、腰やひざが痛くなったり、膀胱炎になったり、免疫力が低下して体中に不調をきたします。それに反発して体温が上昇することがありますが、これも免疫反応のひとつです。風邪をひいて熱が出た時、アイスクリームなど冷たい物を食べて熱を下げればいいと、考えている方が多いのには驚かされますが、これはとんでもない間違いです。感染症や、免疫力の低下に対して体温を上げて回復をはかっているのですから、アイスクリームなんか食べるとよけいに回復が遅くなったり症状を悪化させます。

 医療上問題になる、いわゆる低体温症というのは、あきらかに体に障害を起こす体内温度のことを言います。直腸内は40℃くらいが正常です。35℃になると低体温症です。ですから浣腸は40℃に温めてから用いると、生理的に適合している温度なので、腸内に浣腸液が入った時に違和感が少ないようです。

 さて、この体を温めるという事は、医療の上でも積極的に行われています。がんの治療ではハイパーサーミアと呼ばれる温熱療法があります。これは、がん細胞が死んでしまうくらいがん細胞の温度だけをを上げる、または、温度を適度な状態に上げて、他の治療法を助けるという治療法です。全てのがん細胞に効くわけではないようですが、有効・有用な例も多いようです。例えば、ハイパーサーミア療法の中に、肝臓がんに用いられるラジオ波焼灼術というのがあります。これはがんが1個なら5㎝以下、3個なら3㎝以下などいくつかの条件が付くものの、がん細胞そのものに電極を刺し、ラジオ放送に使うような高周波を流して温度を上げ、がん細胞を焼くというものです。治療効率がよく患者への負担が少ない、安全性の高い方法として広く使われ始めています。

 健康な人でも、1日2000~5000個ほどのがん細胞が毎日作られていますが、何故それがひどくならないかというと、免疫があるからです。その免疫力を有効に保つためには体温の維持が必要です。入浴や温泉、岩盤浴による療法も研究されています。口呼吸が人間の体温を下げているという報告もあります。

 すぐに体温を上げることは難しくても、適度な運動と規則正しい生活をして免疫を維持し、冷たい飲食物の摂り過ぎやエアコンの使い過ぎに注意して、鼻呼吸を心がけ、体温を維持する能力を保持できるよう努めることが、多くの感染症・生活習慣病から体を守ることに寄与することは間違いないようです。