お薬の開発について

 製薬メーカーが一つの薬を創って、発売するまでに10年の歳月と100~1000億のお金がかかると言われています。今、盛んに使われるようになったジェネリック医薬品は、この発売までにかかった歳月とお金がかかっていない分、先発品と有効成分・用法用量・効能効果が同じであっても、厚労省が薬価を安くつけます。民間の会社が作った製品ですが、値段を付けるのは国、というところが一般の商品と違うところです。

 ジェネリック医薬品が先発品より薬価が安いのは、決して、安い材料を使っているとか、人件費の安い国で作っているからとかいう理由ではありませんので、よくご理解ください。
 さてその開発ですが、最初に研究所で物質がつくられてから具体的にどのような作業をするのでしょうか?

 まず、お薬の開発のために行う試験を治験または開発治験といいます。
 その治験は大きく3つの段階に分かれます。それぞれ第I相試験(phase1)、第II相試験(phase2)、第III相試験(phase3)と呼ばれています。

第I相試験(phase1):通常、少数の健康な成人又は患者様を対象として、治験薬の安全性や、治験薬がどのように体内に吸収され排泄されるかを調べます。予測される副作用の種類と程度を知ることを目的としています

次の第II相前期試験(phase2)は前期と後期に分かれます。
第II相前期試験(phase2):比較的少数の患者様に対して、第I相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤が使用され、薬の安全性、効き目、適切な投与量等を調べます。
第II相後期試験(phase2):臨床推奨用量での有効性、安全性を確認します..前期第Ⅱ相試験で検討された臨床推奨用量における有効性、安全性の確認、2.被験薬投与時の臨床経過を把握することにより、どの時点でどのような項目を観察すれば被験薬の特徴を証明できるか、というエンドポイント(治療の意義を判断するための指標)の検索、3.薬物動態の検討、などを行なうことにあります。
第III相試験(phase3):多数の患者様に対して薬剤を使用し、第II相試験よりも詳しく情報を集め、実際の治療に近い形で薬の効果と安全性を確認します。
 これらの治験は行う施設で審査委員会がひらかれ、よく検討されたうえで携わる医師などを選定し、またその医師は患者さんを選定し、十分な説明を行ったり受けたりしたうえで行われますので、大変な作業です。そうして出されたデータも、大変な時間と手間をかけて吟味されます。結局は効果不十分とされ、または当初予測できなかった副作用が出るなど、さまざまな理由で発売することができなかった薬もあります。しかし、そのプロセスを経たからこそ、日々、良いお薬が世に出てこられるのです。

 ちなみに、お薬の発売後は「市販後調査」といって効果や副作用に関する追跡調査があります。市販後調査では、おくすりが実際に現場で使われるようになって、本当に期待された効果が出ているのか、予想外の副作用はでていないか、他の薬との飲み合わせはどうかなど、多岐にわたって報告・検討がなされ、その結果、注意書きや効能が新しく追加されたり削除されたりすることがあります。