子宮頸がんは2つの対策で予防を

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子宮頸がんにかかる人は年間約11,000人で、20代後半から40代に多く発症します。この時期は女性が出産や子育てをする時期と重なることから、子宮頸がんは“マザーキラー”とも呼ばれます。進行すると治療は難しくなります。早めの対策が大切です。

子宮頸がんの初期には症状はほとんど現れない

子宮頸がんの原因のほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)で、性交渉などによって感染します。HPVはありふれたウイルスで、性交渉体験のある女性の約8割が一度は感染するといわれています。しかし、感染したからといって全員が子宮頸がんになるわけではありません。ほとんどの場合、ウイルスは免疫によって自然に排除されますが、1割ほどの人は感染した状態が続いて異形成というがんの一歩手前の病変ができ、その一部の人が子宮頸がんを発症します。

子宮頸がんの初期には自覚症状が現れません。出血や痛みなどの症状が出たときにはすでに病状が進行しています。こうした状況にならないためには、2つの対策が有効です。

小学校6年生~高校1年生相当の女子のHPVワクチン接種は無料

対策の1つは、HPVワクチンの接種によりHPVの感染の危険性を少しでも下げることです。

HPVワクチンは2013年に定期接種の対象に指定されました。しかし、接種後に頭痛や倦怠感などの訴えが相次いだため、厚生労働省は接種の積極的な呼びかけを中止しました。その後、国内外の多数の研究結果から安全性と有効性が確認されたとして、2022年から積極的な呼びかけを再開しました。

HPVワクチンの定期接種の対象は小学校6年~高校1年生相当の女子で、公費により無料で接種を受けられます。また、1997年4月2日~2007年4月1日生まれの女性で、過去にワクチン接種を3回受けていない人を対象に、公費で接種できるキャッチアップ接種もあります。

HPVワクチンの接種は男性にも有効とされていて、WHOでは男性にもHPVの接種を推奨しています。ただし、ほとんどの自治体で男性のHPVワクチンは全額自己負担です。

20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を

ワクチンを接種してもHPVの感染を100%防ぐことはできません。そこで2つめの対策である子宮頸がん検診が勧められています。 HPVに感染したとしても、がんにまで進むには何年もかかります。定期的な検診により、がんになる前の異形成の段階で発見できれば、頸部の一部だけを除去したりレーザーを照射したりして、子宮の全摘を避けられます。

HPVワクチン接種の有無にかかわらず、20歳を過ぎたら2年に1回、子宮頸がん検診を受けましょう。ほとんどの自治体で費用の補助を行っています。なお、子宮頸がんについてわからないことがあるときは薬局の薬剤師に気軽にご相談ください。
イラストレーション:堺直子