結核の集団感染

山梨県で集団感染がありました。

結核は過去の病気ではありません。
「結核」と聞くと、青白い顔をした人が咳き込んで、やがては血を吐き倒れてしまうという、昔の映画や小説を思い出しますね。
現在では、医学の発達や予防接種の普及により、昔ほど怖い病気ではなくなりました。
しかし近年、薬の効かない結核菌が発見されるなど、改めて結核の恐ろしさに注目が集まっています。

*かつては不治の病だった

現在の日本で「不治の病」と聞くと、真っ先に思い出すのは「癌(がん)」ですが、かつては「結核」でした。
当時は、国民病と言われるほど多くの人が命を失い、大変恐れられた病気だったのです。
しかし、ストレプトマイシンなどの抗生物質の発見やBCGの予防接種が行われるようになった結果、
日本では第二次大戦以降、患者数が劇的に減っていきました。
ところが現在でも、世界では年間約300万人、日本でも約2100人(平成19年厚生労働省調べ)の人が、結核で命を落としているのです。
抗生物質がこれだけ進歩している今日で、なぜ命を落とす人がいるのでしょうか?

かつては、ほとんどの人が結核菌に対する免疫を持っていたのに対し、現在では、免疫を持たない人が増えてきたからと言われています。
BCGを受けても陽転※しないまま成人した人やBCGそのものを受けていない人は、特に要注意です。
また、結核は、感染したからといって直ちに発症する病気ではありません。
感染後、何年も、時には何十年も体の中で眠っていて、免疫力が落ちたときに発症するのです。

※陽転とは
BCGの摂取で、ツベルクリン反応が陽性になること。

*薬の効かない結核菌が登場

実は最近、結核治療に使われる薬のうち、4種類以上が効かない「超多剤耐性結核菌」(XDR-TB)とよばれる結核菌が発見されました。
恐ろしいことにこの結核菌は、東ヨーロッパやアジアを中心に広がりつつあり、日本の結核患者でも0.5%が2種類の薬が効かない菌に感染していることもわかりました。
さらに、このうちの4人は国内で使用されている10種類の薬のいずれにも耐性を示しているという深刻な状態となっています。

この超多剤耐性結核菌は、薬物治療を途中でやめるなど、きちんと治療をしなかった場合に発生すると考えられています。
抗生物質が効かないだけではなく、治療は非常に困難で、感染を広げないよう、患者を隔離しなければなりません。

*2週間以上続く咳に注意

結核は、空気感染で感染し、おもに呼吸器官で発症します。初期は、咳やたん、微熱やだるさなどの症状があり、風邪に似ています。
2週間以上咳が続いた場合は、結核が疑われますので病院に受診しましょう。
また、若い世代の多くは未感染であることが多いため、発症が早い傾向にあります。
とくにHIV感染者やAIDS発症者が感染すると命に関わります。また、抵抗力の弱い赤ちゃんが感染すると重症になりやすいので危険です。
予防接種が有効ですから、BCGを忘れないで受けましょう。