妊婦さんへ
おなかの赤ちゃんが健康に生まれてくるために、知っておくべきお話がたくさんあります。
妊娠中にウイルスや細菌、寄生虫などに母体が感染すると、母親からお腹の赤ちゃんにうつってしまうことがあります。
それによって、赤ちゃんが何らかの症状を持って生まれてくることがあります。
そのようなことが起きないように、妊娠中の女性は、「感染しないように予防すること」がとても大切です。
では、具体的にはどうすればよいのか、予防するために注意すべきことを、ここにまとめておきます。
妊娠中の感染予防のための注意事項 - 11か条
1.石鹸と流水で、頻繁に手を洗ってください。
特に以下の場合は念入りに洗ってください。
・トイレを使用した後
・生肉、生卵、または洗っていない野菜や果実に触れた後
・調理や食事の用意をする前後
・ガーデニングや農作業をするなど、土に触れた後
・ペットと触れ合った後
・病気の人の近くにいた後
・手に唾液(特に乳幼児の唾液)がついたとき
・小さな子どもと遊んだり世話をした後
・おむつを替えた後
石鹸と流水が使えない時は消毒用ハンドジェルの使用をお勧めします。
2.小さな子どもとフォークやコップなどの食器を共有したり、食べ残しを食べることはやめましょう。
小さな子どもの唾液や尿にはサイトメガロウイルスが含まれている可能性があります。
健康な人には無害なウイルスですが、妊婦と胎児には影響を及ぼすことがあります。
小さな子どもと関わるときは頻繁に手を洗いましょう。
3.肉は、しっかりと中心部まで加熱してください。
買ってきた調理済みの肉料理も、本当に充分な加熱調理をされているのか定かではありませんから、自分で中心部の赤みがなくなるまでしっかり加熱したもの以外は食べないでください。
加熱が不十分な肉や肉の加工品には有害な細菌や寄生虫(トキソプラズマやリステリア菌)が含まれている可能性があります。
もし混入している場合も、十分な加熱調理で殺してしまうことができます。
その他、生ハム、スモークサーモンも妊娠中は食べないようにしましょう。
サラダや肉や魚のパテからリステリア菌に感染した事例もあります。
基本的に、妊娠中には十分に火が通ったものを食べるように心掛けましょう。
4.殺菌されていないミルクや、それらから作られた乳製品は避けましょう。
殺菌済という確証がない限りはフェタチーズ、ブリーチーズなどの「ソフトチーズ」は食べないでください。
海外で供されるチーズではこういった種類のものが珍しくありません。
殺菌していないこれらの製品には有害な細菌や寄生虫が含まれている可能性があります。
5.汚れたネコのトイレに触れたり、掃除をするのはやめましょう。
できるだけトイレの掃除は他の人に代わってもらいましょう。
どうしても自分でやる必要がある場合は、手袋やゴーグルを着用し、作業後には必ず手を洗ってください。
また、ネコのトイレは毎日掃除して清潔を保つようにしてください。
ネコの糞にはトキソプラズマなど有害な寄生虫が含まれている可能性があります。
6.げっ歯類(ネズミの仲間たち)やそれらの排泄物(尿、糞)に触れないようにしましょう。
有害なウイルスを運ぶげっ歯類もいます。
まれにそれらがペットのモルモットやハムスターなどにも感染していることがあります。
出産まではそれらペットの世話は他の人に頼みましょう。
7.妊娠中の性行為の際には、コンドームを使いましょう。
性行為を通じて、サイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルスなどのウイルスやクラミジアなどに感染することがあり、これらは胎児・新生児に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また、特別な病原体でなくても、膣内の細菌感染の刺激が早産の原因となることもあります。
これを防ぐためにもコンドームの使用が望まれます。
また、唾液を介して感染する病原体もいますのでオーラルセックスも危険です。
8.母子感染症の原因となる感染症について検査しましょう。
胎児・新生児に影響を及ぼす感染症であっても、妊婦には自覚症状が乏しい場合も少なくありません。
日本では梅毒検査、B型肝炎抗原検査、C型肝炎抗体検査、HIV抗体検査、HTLV-1抗体検査は妊婦健診の際に、ほとんどの産科施設で実施されています。
しかし、 トキソプラズマ抗体検査やサイトメガロウイルス抗体検査などは、任意であり、また検査を奨める施設も多くはありません。
自分が現在、何か感染症にかかっている可能性はないか、どういった病気にたいして免疫を持っているかを把握して、予防に役立てるためにも、検査は必要です。
トキソプラズマやサイトメガロウイルスの抗体検査も自分から医師に検査を頼むようにしましょう。
9.B群溶血性レンサ球菌の保菌者であるか検査してもらいましょう。
妊婦の10~30%が感染していると言われていますが妊婦自身には自覚症状がありません。
しかし、赤ちゃんの髄膜炎や死亡につながる感染症です。
妊娠後期で簡単な綿棒テストをすることでわかります。
保菌していることが判明すれば、分娩中に赤ちゃんを保護する方法があります。
10.感染症から自分と胎児の身を守るために、妊娠前にワクチンを打ちましょう。
ワクチンが存在する感染症(たとえば、麻疹、風疹や水痘)は、ワクチンを打つことで防げます。
自分が病気にならないため、健康を保つため、将来の自分の胎児を守るため、また周囲にいる妊婦とその胎児に感染させないためにも、ワクチンを打ちましょう。
現在妊娠している方は、出産後、なるべく早く次の妊娠までの間にワクチンを打ちましょう。
11.感染している人との接触を避けましょう。
自分が未感染であるか、ワクチンを打っていなかった場合、
水痘や風疹などに感染している人には近づかないようにしましょう。
もし接触した人がこれらの病気に罹っていることがわかったら、すぐに病院に連絡して下さい。
水痘や麻疹の場合は、すぐに免疫グロブリンの注射をすることで発症を防ぐことができるかも知れません。
参照資料:http://toxo-cmv.org/for_maternity.html