“子供と薬”通信(3)

~アトピー性皮膚炎の予防について~
今年は例年に比べ寒くなるのが遅い感じもしますが、これからの冬の時期は空気が乾燥し、肌がかさつきやすくなります。乾燥対策は高齢者や水仕事が多い方だけでなく、子供でも重要です。今回は、昨年見つけた「アトピー性皮膚炎の予防について」と題した雑誌の記事1)の紹介です。赤ちゃんのアトピー予防のための保湿について書かれていました。

記事を書かれたのは、総合母子保健センター愛育病院皮膚科部長 山本一哉氏です。氏によると、皮膚の構造が完成するのは妊娠38週ごろなので、新生児の皮膚は、生まれて間もなくであればあるほど未完成さが残っている。ですから、生後なるべく早い段階に(難しいとは思いますが、できれば生後24時間以内が良いとか)、胎内の環境に近いスキンケアを始め、それを少なくとも1年以上続けてあげたいそうです。記事で紹介されていたスキンケアのコツは「まずきれいに(保湿成分の入ったウエットシートで)拭く、そしてしっとり」です。紹介されていた保湿剤は、以下の3種で、いずれも乳液タイプで、氏が5-10年以上使用経験して問題のなかったものです。

①すべすべみるるベビーローション(しっとり):(明治)1996年より使用
②キュレルローション(医薬部外品):(花王)2004年より使用
③ママ&キッズベビーミルキーローション:(ナチュラルサイエンス)2007年より使用

2014年10月には、国立成育医療研究センター(大矢幸弘氏らのチーム)がまとめた同様の研究結果が報道されました2)。「チームは、アトピー性皮膚炎になった経験のある親を持つ新生児118人を、毎日1回以上、全身に保湿剤(2e[ドゥーエ])を塗るグループと、特別なスキンケアをしないグループに分け、32週後に専門医が湿疹の状態を診断した。その結果、保湿剤を塗ったグループは、アトピー性皮膚炎の発症率が約3割低かった。乾燥で角質細胞が傷つき皮膚の保護機能が低下するのを予防できたとみられる。」

今回紹介した記事は新生児のものですが、アトピー性皮膚炎の肌は乾燥しやすく、外部からの異物や刺激の侵入を防ぐバリア機能が低下していると言われるので、同様に保湿が重要でしょう。上記の保湿剤以外で保湿性の高い成分としては、ヘパリン類似物質(代表的な医薬品名としてヒルドイド)があります。もともとは医療用ですが、最近は、HPクリームなどの商品名で薬局やドラッグストアでも販売されているので、乾燥がひどいところや痒くなりやすい所に使うと良いでしょう。寒くなると、どうしても熱めのお風呂に浸かりたくなりますが、そうすると入浴時に皮膚から洗い流される脂分も多くなり、乾燥しやすくなります。清潔にしようとナイロンタオルでゴシゴシこするのも逆効果です。お風呂から上がったら、肌の水分が逃げないうちに保湿剤を塗りましょう。5分以内が理想的です。

1)薬局 2014年8月号(Vol.65)、P7-P10より
2)日本経済新聞HPより転載 2014年10月2日の記事より