”子供と薬”通信(5)

~新しい虫よけ剤について~
 これまではディートを含む虫よけ剤が主でしたが、今年、イカリジンという新規の虫よけ成分を含む虫よけ剤が発売されました。イカリジンは1986年にドイツで開発された成分で、日本では今年発売されたばかりですが、現在54か国以上で承認されています。ディートと同様に、米国疾病対策センター(CDC)で有効性が証明され、米国環境保護庁(EPA)が認めた有効成分の一つです。5%イカリジン含有虫よけ剤が10%ディート含有虫よけ剤と同等の効果があると謳われています。イカリジンはディートのような特有の匂いが無く、小児の使用に制限がありません。繊維・樹脂を傷めにくいようなので、衣服の上から噴霧するのにも適しているようです。現時点ではエアゾール剤の2製品(天使のスキンベープ〔フマキラー〕と、虫よけキンチョールDFパウダーイン〔キンチョー〕)のみですが、今後、他の剤形のものも販売される可能性があります。小児にも安全とされていますが、気体を吸い込まないように、顔に直接スプレーすることは避け、自分の手にスプレーしてから塗布してあげることが大切です。

先月、厚生労働省は、「ジカ熱やデング熱などの感染症を媒介する蚊やダニの対策のため、ディートは30%、イカリジンは15%まで有効成分の濃度を高めた虫よけ剤について、製造販売の申請があった場合に早期審査の対象にすると決めた」と公表しました。効果がより長持ちする虫よけ剤の流通を促すのが狙いのようです。これは、中南米を中心に流行するジカ熱や、2014年に国内感染の患者が続出したデング熱を媒介する蚊への対策強化につながるほか、マダニにかまれて感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」にも効果を見込んでいるためです。今後、虫よけ剤の新商品が多く出てきそうです。
野外では日焼け止めを同時に使用する機会もあるでしょう。一般的に日焼け止めを先に使用し、次にその上から虫よけ剤を使用します。虫よけ剤は日焼け止めほど頻繁に使用する必要はありません。日差しと蚊から身を守るためには長袖長ズボンも有効です。また肌に直接忌避剤を塗布しなくても衣服に塗布すれば虫よけ剤は効果を現します。

(参考資料)国立感染症研究所 www0.nih.go.jp/vir1/NVL/DEET.pdf