後発医薬品(ジェネリック医薬品)についての私見 ~私はジェネリック推進派です~
後発医薬品は、「新薬の特許期間終了後に製造・販売される、化学的には同じ成分の医薬品」(大辞林より)です。新薬より薬価が安いため、厚労省が利用を推進していますが、「安かろう悪かろう」といったイメージや誤解があるように感じられます。
私は前職として6年間、製薬会社(武田薬品)の研究職をしていました。新規の化合物を合成し、その中に薬になりうるものはないかを見つけだすのがその役割でした。そこでは、「化学式が同じであれば、誰がどんな作り方で作ろうと同じ物」というのが大前提で、その大前提が無ければ研究は成り立ちません。その立場からすれば、後発医薬品は新薬(先発医薬品)と同じ成分であるため、薬効は同じはずなのです。確かに、薬の中には、特殊な製剤技術で薬の効果を高めてあるものもありますが、ごくわずかに過ぎません。それ以外で、もし「新薬より効かない」ケースがあるとすれば、それは主に「負のプラセボ効果(注1)」に因るものだと考えます。
九州大学医学部で行われた実験で次のようなものがあります。漆にかぶれるという十三名の高校生に目隠しをして、右手に栗の葉を、左手に漆の葉をこすりつけ、どんな発症経過をたどるかを観察したのです。この実験では、被験者の高校生には、「漆を栗」「栗を漆」と、事実とは逆のことを教えておいたのです。結果は、十三名中の九名で、栗の葉をこすりつけられた右手に皮膚炎が現れたのです。それに対して、実際に漆の葉をこすりつけた左手には、だれ一人異常が現れなかったのです。
医師や薬剤師などの医療関係者の中にも、後発医薬品に懐疑的な意見を持つ方があります。
ただ、その意見が患者に伝わることで「負のプラセボ効果」が働いて、効果を実感できないことがあるとすれば、非常に残念だと思っています。
(注1)偽薬効果ともいい、効果のないはずの成分でつくられた薬剤(偽薬)によってもたらされる効果