誤着地

80代の男性が来店され、目がかすんだり疲れるからと、ビタミン剤と目薬を購入されていた。
母が応対していたので、私はすぐそばで作業をしながらなんとなく二人の会話を聞いていると、どうやらそのご主人、パソコン教室に通われているのだとか。その他にも、最近の話題書をじっくり読むのでかなり目を使われるらしい。
どんな本を読んでいるのかと聞く母に、「村上春樹」と答えるご主人。
さて、なんという題名だったかと、二人でなかなか思い出せずにいる。
母「ああ、確か”201”ですね」
男性「そうそう、その20なんとか」
やれやれと二人で落ち着いていたけど、多分なら、「1Q84(イチキューハチヨン)」であろうか。

全然かすりもしていない所への誤着地だったけど、和んでる所に水を差すのもなんなので代わりに、
「パソコン勉強されて、本当にすごいですね」と会話に入ると、
ご主人は「でも、それで薬を飲んでたら世話ないなぁ~」とカラカラと笑って帰られた。

ご主人の好奇心や探究心にとても感銘を受けた出来事だった。
幾つになっても、あのように在りたいと思った。