怖いもの

もう、終わったと思った。
実家の台所で、蛇口の先端に大きな蜂が止まっているのに気付かずに水道のレバーを上げてしまった。途端に、蜂がこちら目掛けて飛んできた。まさに、目と鼻の先くらいに蜂の姿が迫る。水を出しっぱなしのまま、「ウォーーー!!」と身をひるがえして逃げながらも、もうやられたかなと思った。
一先ず、台所の扉を閉めて、蜂がついてきていないかを確認。なんとか、刺されずに済んだらしい。台所の水は出しっぱなしのままだが、丸腰で止めに入る勇気も無く、主人を呼びに一階に降りる。
コックローチ用のスプレーとキンチョールを主人に手渡し、ガラス戸越しに見守った。二刀流のスプレーであっという間に蜂は退治され、流れっぱなしだった水道の水は止められた。

最近、実家では数日おきくらいに大きな蜂が出る。どこからそんなに入ってくるのか、巣でも作っているのかと疑問に思い父に尋ねると、
「どこも網戸が古くて穴があいているから、入り放題よ」と平然と言う。すぐに修理するつもりもなく、当分はそのまま使うつもりのようだ。

私は、蜂が極端に怖い。刺された経験はなくても、刺された時の痛みを想像して「ヒィッ」となってしまう。道を歩いているときに蜂に遭遇すると、反射的に「ウォーー!!」と10メートルくらいダッシュして逃げてしまうくらい恐怖心が強い。
一方で、もし刺されたら、自家製の虫刺され軟膏の効果を身をもって試せるのになどと悠長なことを思ってしまう。
でもでも、やっぱり怖いので刺されたくない。一刻も早く、網戸を直してもらいたいと願うのだった。