緊張の糸

そのご主人の笑った顔を、私は今まで見たことがなかった。
いつも無表情で少し怖い印象もあり、会話では必要最低限のことしか喋られない。
今日も、病院の薬を取りに来られて、ビニール袋にまとめた薬を淡々とチェックされていたが、ふと手を止めて、私が何の気なしに一緒に入れていた冊子を訝しげに見て「何?」と尋ねられた。
とっさに「あ、フリーペーパーです」と答えると、なんとご主人が満面の笑みでニッと笑って帰られたのだった。
初めて見るふっと緩んだご主人の表情に、内心(ヤッターー!!!)と叫びだしたい気分だった。ちょっとした健康情報誌だったけど喜んでもらうことができ、忍ばせておいて本当に良かったと思った。

毎日、幸せ一杯で生きられたらいいだろうけど、今は一日一日を生きていくのも大変な世の中かもしれない。人に言えずに一人で抱え込んだり、常に緊張状態で頑張っている方が本当に多いのではないだろうか。抱えているものが大きすぎて、笑顔も出せなくなっている人だっているんじゃないだろうか。
ヤマト薬局が、いつも頑張っている方の日常の緊張の糸を、ほんの一瞬でもふっと解くことができるような空間で在れたらと思う。