動揺
数日前の話。
妻とお昼ご飯を食べていると、モコが嬉しそうな顔をして尻尾を振りながら寄ってきた。おそらく「ええ物食べてるね、モコにもちょうだいちょうだい」という意思表示だと思うのだが、モコは既に食事を済ませていたし、人間の食べ物をあげると塩分・カロリーオーバーになるだろうと思い、妻と「モーちゃん、ご飯食べたやろー」「モコの分は無いよー」とあしらっていた。ご飯の一粒でも落ちてこないだろうかと思っているのか、諦めずに食卓の下や周りをウロウロするモコ。
そのうちに2人とも食事が済み、歯を磨くために洗面所へ。
歯を磨いてる途中になんとなくダイニングに戻ってみると、モコがジーっと1点を見つめている。視線の先にはさっきまで2人が食事を食べていた器。気付かれないようにそろりそろりと近づくと、気配や足音を感じたのか、ビクッと身を震わせて驚いた様子で僕の方を見てくる。
目が合ってから2、3秒。大事なことを思い出したかのように慌てて尻尾を振りだすモコ。
推測でしかないが、器を見ながら「2人がいない間に何とかして、あの中身を食べてやる」と思っていたのではないだろうか。で、その方法を思案している時に、思いのほか早く僕が戻ってきたので、驚くとともに考えていたことを悟られないようごまかすために尻尾を振ったのではないだろうか。
妻にその事を話すと嬉しそうに笑っていた。
聞けば、今は亡きクリも晩年散歩中に躓くたびに、照れ隠しなのか慌てて尻尾を振っていたとのこと。
なるほど犬も自分に都合の悪いことがあり動揺すると、何とかごまかそうとするようだ。普段はクールだったクリが恥ずかしそうに尻尾を振る姿を想像して愛おしくなる。
「言葉が通じればもっと仲良くなれるのに」ともどかしく思うが、言葉が通じないからこその愛おしさもある。
どうやら僕も妻と同じように「お犬様症候群」にかかってしまったようです。 3代目夫