謝るバス
初めて見かけた時には驚いて、思わず隣にいた主人に「何あれ?」と言ってしまった。バスの表示に『すみません回送中です』と書いてあったのだ。謝りながら走る回送バスに、すごく違和感を感じた。
その表示を見たときに頭に浮かんだのは、回送バスに対してクレームがあったのではないかということだった。「回送」とだけ表示して愛想無く目の前を過ぎ去っていくバスに対して、腹立たしく思った人でもいたのだろうか。そんなことで文句を言われてしまうなら、なんて、他者に対して非寛容で生きにくい世の中なんだろうか。
少し、この件について調べてみると
「バスが来たと思って手を上げたら回送中で、がっかりする利用者を見るのに忍びない」と運転手らから上がっていた声を受けて導入したというようなことが書いてあった。私の予想に反して、あの表示の出所は運転手さんたちの善意から生まれていたらしい。
『すみません』と表示しなければいけないほど厳しい世の中なのかと、回送バスを見かける度に物悲しくなっていたけれど、これからは少し違った目で見れそうだ。