怒り

その日は地域の商店の集まりがあったので、帰りが普段より遅い9時前になった。
車で帰っていると、車の表示温度は-4度となっていた。
帰り道に当たるバイパスが夜間工事中だったので、側道を上ったところで車を止められてしばらく対向車が通り過ぎるのを待つことになった。
『こんな寒い中働いて、工事の人達も本当に大変やな~』と主人と話していると、同じように本線で止められていた2台目の車が催促をするようにクラクションを鳴らした。某移動パン屋のトラックだった。
ジリジリと前の車に詰め寄ったりして、あんなことしたって大して変わらないのに変な車もいるもんだなとその光景を眺めていた。
対向車がひと通り過ぎた後で、ガードマンが本線の方を誘導したのだが、なんと先程のパン屋のトラックがガードマンへの腹いせにわざとガードマンすれすれの所を車で横切って走り去っていったのだった。
一連の行動を見た後で、主人に『嫌なもの見てしまったわ。変な奴もいるもんやな。』と言うと彼も同様に一部始終を見ていたようで『誰も得せえへんのにね。』と言った。
見たくもなかったものを見てしまったせいで、しばらく二人ともモヤモヤと嫌な気分が離れなかった。
万一ガードマンの人に車が当たっていたとしたら絶対証言してあげるのに、とか、ガードマンの人も歯を食いしばってむしろ車にぶつかりにいってても良かったんじゃない?怪我でもしたら、自動車運転過失致死傷罪になって勝てたかもしれない。と慰めにそんな話をしながら帰った。
近頃は、車を運転しているだけで見たくもないことを目撃したり、聞きたくもないものが耳に入ったりして嫌な気分になってしまうことも多い。
嫌なことは出来るだけ目にしたり耳にしたくはないけれど、そういったことに遭遇した時に感覚が麻痺して何も感じなくなってしまっていては良くない気がする。
怒りや不快感はマイナスな感情ではあるけれど、それが正しいものであったり優しさゆえに沸き起こる感情であるならば、逃げずに真っ直ぐ見据えて大切にしたいと思う。