1.冥界より (清姫は語る 津名先生のお話に沿って)
都が平安京にありましたころ、紀州は日高、道成寺にて清姫が世を去りましてから、かれこれ千年の余になります。現在ではずいぶん変わったようで、・・・でも変わらぬは人のこころの頼りなさ。
人ひとりの力ではどうしようもない、遠い、深い、わけがあり最期の鐘巻きの場では、キリスト同様の血の涙流した清姫・・・・・・。人はみな男も女も、のっぴきならぬ己れと風土のなりわいの歴史を、情念のなかに背負って生きている。
清姫の場合、熊野は真砂の庄司の娘に生まれたことが、そもそもの因となった。