傷寒論 辨脈法 第二十九條
趺陽脈遲而緩胃氣如經也趺陽脈浮而數浮則傷胃數則動脾此非本病醫特下之所爲也榮衛内陷其數先微脈反但浮其人必大便鞕氣噫而除何以言之本以數脈動脾其數先微故知脾氣不治大便鞕氣噫而除今脈反浮其數改微邪氣獨畱心中則飢邪熱不殺穀潮熱發渴數脈當遲緩脈因前後度數如法病者則飢數脈不時則生惡瘡也。
趺陽の脈、遲にして緩なれば胃氣經の如くなり、趺陽の脈浮にして數、浮は則ち胃を傷り數は則ち脾を動ず、此れ本の病に非ず醫特に之を下して爲す所なり、榮衛内に陷り其數先づ微に脈反って但浮なれば其人必ず大便鞕く氣噫して除く、何を以て之を言ふ、もと數脈脾を動ずるに其數先づ微なるを以ての故に脾氣治らず大便鞕く氣噫して除くを知る、今脈反って浮其の數微に改まり邪氣獨り畱まれば心中則ち饑ゆ、邪熱穀を殺せず潮熱發渴、數脈當に遲緩なるべく脈前後に因り度數法の如ければ病者則ち饑ゆ、數脈時ならざれば則ち惡瘡を生ずる也。
趺陽の脈(足の陽明胃經)が遲緩である。これは胃氣が經の如く(平常)である。趺陽の脈が浮で數である場合は、浮は胃を傷り(弱くする)數は脾を動ず(動揺させる)、これは本来の病氣ではなく、医者が特に下してこうなったのである。榮衛が(下により)中に落ち込んで、その數が微になり、脈がただ浮いてその人は大便が鞕く、おくびが出て除かれるが、どうしてこういうことが言えるのでしょうか。この人は脈が元々數で脾を動じている、その數が微であるので脾氣が治まらないのを知り、大便が鞕くおくびが出て症狀が治まるのを知るのです。今脈が逆に浮でその數が微になって、邪氣が独り畱まり、心中が飢えてしまいます。邪熱は穀を殺(消化)さないので、潮熱したりのどが渇きます。數脈は当然遲緩であるのに、脈の前と後(変わる前と後)の度數(數から遲に変わるその數)が原則どうりであれば、病人は当然食欲が出てきます。數脈が時のものでなければ、惡瘡を生じます。