傷寒論 辨脈法 第三十條

師曰病人脈微而濇者此爲醫所病也大發其汗又數大下之其人亡血病當惡寒後乃發熱無休止時夏月盛熱欲著複衣冬月盛寒欲裸其身所以然者陽微則惡寒陰弱則發熱此醫發其汗令陽氣微又大下之令陰氣弱五月之時陽氣在表胃中虛冷以陽氣内微不能勝冷故欲著複衣十一月之時陽氣在裏胃中煩熱以陰氣内弱不能勝熱故欲裸其身又陰脈遲濇故知血亡也。

師の曰はく、病人、脈微にして濇なる者は、此れ醫の爲に病まさるる所なり、大いに其汗を發し、又しばしば大いに之を下し其人亡血す、病ひ當に惡寒して後に乃ち發熱し休止する時なかるべし、夏月熱盛んにして複衣を著んと欲し、冬月寒盛んにして其身を裸にせんと欲す、然るゆゑんの者は陽微なれば則ち惡寒し陰弱なれば則ち發熱す、此れ醫その汗を發し陽氣をして微ならしめ又大いに之を下して陰氣を弱ならしむ、五月の時は陽氣表に在り、胃中虛冷す、陽氣内に微なるを以て冷に勝る能はず故に複衣を著んと欲す、十一月の時は陽氣裏に在り、胃中煩熱す、陰氣弱なるを以て熱に勝る能はず故に其身を裸にせんと欲す、又陰脈遲濇故に血亡ぼすを知るなり。

先生が言われるのには、病人の脈が微で濇っている者は、これは医者の爲に病氣になったと言える(医者が治療して失敗した例)。大いにその汗を發したり、何度も大いにこれを下したりすると、その人は(病人は)亡血(血が少ない)し悪寒し後に休止する時が無い。夏熱が盛んな時に沢山着こんでみたり、冬寒さが盛んな時に身体を裸にしようとしたりする。こうしたものは、陽が微であると悪寒し、陰が弱いと發熱する。これは医者がその汗を發し陽氣を微にさせ、又大いに下しをかけ陰氣を弱くさせる。五月と言うのは(夏である)陽氣が表にあって胃中が虛冷するのである。陽氣が内側に微で冷に勝つことが出来ない、だから沢山着こむのだ。十一月(冬である)には陽氣が裏にあるので胃の中が煩熱する、だから陰氣が内側に弱く熱に勝つことが出来ない、だからその身体を裸にしようとするのだ。また陰脈(尺中)が遲で濇っているから血が滅びているのを知る。