傷寒論 傷寒例 第二十六條

凡得時氣病至五六日而渴欲飮水飮不能多不當與也何者以腹中熱尚少不能消之便更與人作病也至七八日大渴欲飮水者猶當依證與之與之常令不足勿極意也言能飮一斗與五升若飮而腹滿小便不利若喘若噦不可與之忽然大汗出是爲自愈也。

凡そ時氣の病を得て五六日に至りて渴き、水を飮まんと欲するも飮むこと多く能はざれば與ふるに當らざるなり、何となれば腹中の熱なほ少きを以て之を消する能はず、便ち更に人に與ふれば病を作すなり、七八日に至り大いに渴し水を飮まんと欲する者も猶ほ當に證によりて之を與ふべし、之を與ふること常に足らざらしめ意を極めしむるなきなり、能く一斗を飮まんと言へば五升を與ふ、若し飮んで腹滿小便不利し若くは喘し若くは噦すれば之を與ふべからず、忽然として大いに汗出づるは是れ自から愈るとなすなり。

一般にその時の病になって、五六日たって、のどが乾いて水を飮みたがり、沢山飮むことができない、与える必要が無いのである、これはどういう事でしょうか、腹中の熱が少ないため、これを消す事が出來ない、だから人が病を作るのである、七八日なって、大いに渇いて水を飮みたがる者は、當然病證に依って與えてやりなさい、水を飮ませるのを少な目にして、思うがままに飮ませてはいけない、一斗を飮みたいと言へば、半分の五升を飮ませてやる、若しも飮んで腹が滿し、小便不利し、若しぜえぜえしたり、しゃっくりするものには、飮ませてはいけない、こうなっても大汗が出てきたものは、是れは自然に愈ろうとするのである。