傷寒論 太陽病中篇 第七十條

血弱氣盡腠理開邪氣因入與正氣相搏結於脇下正邪分爭往來寒熱休作有時默默不欲飮食藏府相連其痛必下邪高痛下故使嘔也小柴胡湯主之。

血弱氣盡して、腠理開き、邪氣因って入れば、正氣と相ひ搏ち、脇下に結ぼれ、正邪分爭し、往來寒熱、休作時あり、默默として飮食を欲せず、藏府に相連ぬれば、其の痛み必ず下だる、邪高く痛みくだる、故に嘔せしむるなり、小柴胡湯之れを主どる。

血は榮であるから身體内を養う氣が弱まってしまい、外を守る氣の衛氣が虛してしまうと、表即ち皮膚のはりがなくなって、腠理が開きっぱなしになってしまい、そのために病邪がそれによって身體内に入って、正しい榮衛の氣と邪氣とがお互いにあつまって、それがわきの下に結ぼれてしまい、身體内の正氣と邪氣とがその分野を爭うようになり、そのために惡寒と發熱とが行ったり來たりするのである。
 陽不足は惡寒であり、陰不足は發熱であるから、陰陽のバランスがくずれて起こると考えてもよい。そしてその發作に一定の時があり、氣がしずんでなんとなく嘔きけがあり飮んだり食べたりしたがらなくなるのである。邪氣は經にそって藏腑に入って痛みを生じ、胸から脇下の方に下ってくる。はじめ邪は上焦の方にあるが、やがて下って腹が痛むのである。邪氣が腹に入ると正氣と爭って氣が上逆して、嘔が起こるのである。小柴胡湯が主治するのである。