傷寒論 太陽病中篇 第八十六條

太陽病中風以火劫發汗邪風被火熱血氣流溢失其常度兩陽相熏灼其身發黄陽盛則欲衄陰虛則小便難陰陽俱虛竭身體則枯燥但頭汗出劑頸而還腹滿微喘口乾咽爛或不大便久則讝語甚者至噦手足躁擾捻衣摸牀小便利者其人可治。

太陽病中風、火を以て劫し、汗を發すれば、邪風火熱を被り、血氣流溢、其の常度を失ひ、兩陽相熏灼すれば、其の身黄を發す、陽盛んなれば則ち衄せんと欲し、陰虛すれば則ち小便難し、陰陽俱に虛竭すれば、身體則ち枯燥し、但頭汗出で、頸を劑して還り、腹滿微喘、口乾咽爛、或ひは大便せざることあり、久しければ則ち讝語し、甚しき者は、噦するに至り、手足躁擾し、捻衣摸牀するも、小便利する者は、其の人治すべし。

太陽病とか中風で發汗しないので、火熱療法で無理に汗をかかせたところが、邪風がその火熱を受けてしまったために、血に熱を持つようになり、血氣が流れあふれて、そのめぐりかたにくるいを生じてしまった。そして火熱療法の熱と邪熱とが、おたがいに熏じあって、身に黄を發するようになってしまった。この場合に汗が出れば、熱氣が體外に放出されますから黄を發しません。その場合に陽氣の方が盛んでありますと、熱氣が上衝して血を動じ、鼻血を出すようになってしまう。陰氣の方が衰弱すると、陰氣は下焦を養うから、小便の出が惡くなるのであります。陰陽の兩方の氣が虛弱になって、少なくなってしまうと、身がからからにかわいてしまう。即ちやせて艶がなくなってしまう。ただ頭からだけ汗が出て、首から下の方には汗をかかなくなってしまい、腹がはって、かすかにゼイゼイいって、口がかわき、咽がただれてしまう。ある時には、身體が枯燥しているから、津液が充分にめぐらないから、大便が出ないのである。こんな狀態が長く續くと、うわごとをいうようになってしまう。そしてひどいものは、その上にシャックリまでするようになるのである。そして手足をバタバタとして、おきばもないようにみだれる。そして無意識に着物の衣のあたりをひっぱり寢床をまさぐったりするようになる。その場合に小便が出てくるものは治すことができるのである。これは津液がめぐって來た證拠である。