傷寒論 陽明病 第三十六條

傷寒若吐若下後不解不大便五六日上至十餘日日晡所發潮熱不惡寒獨語如見鬼狀若劇者發則不識人循衣摸牀惕而不安微喘直視脈弦者生濇者死微者但發熱讝語者大承氣湯主之若一服利則止後服。

傷寒若くは吐し若くは下し後解せず、大便せざること五六日より上りて十餘日に至り、日晡所潮熱を發し惡寒せず獨語鬼を見る狀ちの如し、若し劇き者は、發すれば則ち人を識らず循衣摸牀惕して安からず微喘直視す、脈弦なる者は生き濇なる者は死す、微なる者但發熱讝語する者は、大承氣湯、之を主どる、若し一服して利すれば後服を止む。

傷寒で或いは吐かせたり、或いは下したりした後で、治るはずの病がなおらずに大便が出ないことが五日から十數日にまで及び、夕暮れになると潮熱を發して惡寒をせず獨りごとをいいだし、その様子が死んだ人と話しているようである。すなわち讝語である。このような症狀が劇しい者で、發作的に起きると人事不省になってしまい、着物のえりをいじくったり、フトンの上を手さぐりしたりして筋肉がケイレンを起こして安靜にしていられず、少しくゼイゼイして目がすわり、脈を診てみると弦であるものは、實であるから助かるし、しぶっているものは死ぬのである。
 病狀がかすかなもので、ただ熱を發してうわごとをいう者は、大承氣湯が主治するのである。もし大承氣湯を一回服用して下利をしたならば、あとは服用する必要はないのである。