★ 2007年 第12回大分県薬剤師学術大会

★ 2007年 第12回大分県薬剤師学術大会 ★

初めて、一緒に働いている薬剤師さんに発表してもらいました。スライドを作って、発表は練習してもらいました。ノートPCを貸して、家で練習してもらいました。
どうなるか心配でしたが、意外と、立派に堂々とプレゼンされました。審査員の先生が優秀発表賞をあげてもと言われたほどでした。





演題: クラリシッド・ドライシロップの熱による変性:炎天下の車内での注意

所属: ワタナベ薬局 上宮永店  ○柴田美紀、 松本康弘

【はじめに】 クラリシッド・ドライシロップ(DS)は平成18年6月より剤形が変更され、前より服用しやすくなった。しかし、剤形変更にも関わらず、服用できないという患児の保護者からのクレイムもある。一方、「薬局で薬をもらった後、買い物途中、車中に長時間置いていたらクラリシッド®DSが変性し苦味が増した」、という報告を受けた。保管方法によってクラシッドDSの味が変化し、コンプライアンスに影響している可能性があると考え、車中での保管時のクラリシッドDSの変化を観察した。

【実施内容】 クラリシッドDS(アボット)は分包器(高園産業)を用いて1gずつグラシン紙で分包した。分包したクラリシッドDSはa)ダッシュボードの上(薬袋に入れた場合と入れない場合)、b)小物入れの中、c)フロントシートの上、d)リアシートの上に放置した。朝8時にそれぞれの場所に置いて、夕方5時に回収した(平成18年10月15日、平成19年7月29日)。回収したクラリシッドDSはそれぞれ形状を観察後、苦味を比較した。なお、苦味の比較は、痛みのスケールであるVisual Analog Scale(VAS)を改良し、未処置のクラリシッドDSと比較した。

【結 果】 
形状:夏季(7/29)にダッシュボードに置いたクラリシッド®DSは完全に凝結した。この凝集塊は水に入れても乖離せず、元には戻らなかった。この変化は1時間放置しただけでも、また薬袋に入れてもみられた。また、フロントシートにおいた場合、クラリシッドDSは完全には凝結しなかったが、いくつかの凝集塊が認められた。一方、ダッシュボードの中に入れた場合、フロントシートまたはリアシートに置いた場合には認められなかった。
苦味:ダッシュボードの上に置いたクラリシッドDSは未処置のクラリシッドDSと比べて、風味がなくなり、苦味が増した。同様な苦味の増加は、薬袋中のクラリシッドDSや午前中だけダッシュボードに放置した場合にも認められた。一方、秋季(10/15)に行ったクラリシッドDSでも軽度ながら苦味が増した。
なお、中津市のそれぞれの日の気温は下記の通り(大分県気象台)。
天気 最高気温 最低気温 平均気温
平成19年7月29日: 晴れ 32.5℃ 24.1℃ 24.1℃
平成18年10月15日: 晴れ 26.2℃ 13.5℃ 19.3℃

【まとめ】 クラリシッドDSは車中に放置すると、変性し、苦味が増すことが確認された。特に、1時間という短い時間でも、炎天下では変性し、苦味が増した。さらに、秋季でも軽度ながら認められた。今回の結果を踏まえ、クラリシッドDSが処方された場合は、投薬時に車内に放置しないように注意を喚起した。