★ 2008年 第13回大分県薬剤師学術大会 その1 ★

★ 2008年 第13回大分県薬剤師学術大会 ★

前に、クラリシッドDSの熱変性を報告しました。その後、この熱変性で苦味以外、変わったところがないか検討しました。今回の溶出性試験は、勿論、薬局ではできません。そこで、大分県薬剤師会検査センターに依頼しました。初の他施設とのコラボです。大変でしたが、結構いい仕事が出来ました。とくに、検査センターとコラボすると全く違った仕事が出来ることを皆さんに紹介しました。





演題:クラリスロマイシン・ドライシロップの熱による変性(第2報):
   熱変性による溶出性の変化
○松本 康弘1)、甲斐 理恵2)、久寿米木 洋子2)
所属:ワタナベ薬局上宮永店1)、大分県薬剤師会検査センター2)

【はじめに】 
我々はクラリスロマイシン・ドライシロップ(DS)を炎天下の車内に放置すると変性し、苦味が増すことを既に報告した1)。変性したクラリスロマイシンDSは硬く、水中でも1時間では崩壊しなかっ
た2)。変性したクラリスロマイシンDSの溶出性は変化した可能性が考えられた。今回、クラリスロマイシンDSの変性をより詳細に検討するために、インキュベータで温度を制御しクラリスロマイシンDSの変性を調べるとともに、変性したクラリスロマイシンDSの溶出性を調べた。

【実施内容】 
1)インキュベータでの加温:クラリシッド®DS(アボット)は分包器(高園産業)を用いて1gずつグラシン紙で分包した。インキュベータの温度を50℃、 60℃、70℃および80℃に設定し、7時間(10:00〜17:00)加温した。終了後、デジタルカメラで記録した。
2)溶出性の変化:インキュベータで60℃または70℃で7時間加温したクラリスロマイシンDSを用いた。日本薬局方外医薬品規格第三部クラリスロマイシンドライシロップに準じて(pH5.5のリン酸水素二ナトリウム・クエン酸緩衝液900mLを用い,溶出試験法第2法により毎分50回転で試験を行う)、90分までの溶出率を測定した。

【結 果】 
インキュベータによる加温:60℃から明らかな凝集塊が認められた。しかし、凝集塊はもろく、簡単に崩れた。70℃では凝集塊は硬くなり、軽度の力では壊れなかった。苦味も60℃から温度依存的に増加した。
溶出性の変化:60℃に加温したクラリスロマイシンDSの溶出性は、非加熱のクラリスロマイシンDSと明らかな差はみられなかった。しかし、70℃で加温したクラリスロマイシンDSでは、溶出速度が明らかに非加熱のクラリスロマイシンDSより遅くなった。90分後の溶出率が非加熱では 96.77±3.12%、加熱群では61.41±6.98%と明らかに差が認められた(平均±SD、n=6)。

【まとめ】 クラリスロマイシンDSは60℃から変性が認められ、70℃以上ではその変性はより強固になった。特に、70℃で加温したクラリスロマイシンDSの90分後の溶出率は 70%を切っており、溶出試験の規格に届かないという結果になった。このことは熱による変性が味だけでなく、溶出性、ひいては血中濃度変化にも影響している可能性が考えられた。今後、クラリスロマイシンDSの保管に関してはより注意を喚起する必要があると思われる。

1)松本康弘、柴田美紀、第40回日本薬剤師学術大会(神戸)O-7-07-09、2007
2)松本康弘、柴田美紀、第17回外来小児科学会、O-S211、2007