★ 2008年 谷山会営薬局 第17回研究発表会 ★

★ 2008年 谷山会営薬局 第17回研究発表会 ★

昨年の日薬学術大会(神戸)で発表を見ていただいた、東先生から、上記、研究発表会へ来ませんか?と言うお誘いの言葉がかかりました。全く予想もしなかったので、ビックリしました。しかし、地域で17回も研究報告会を続けているという、姿勢は参考にしたいと思い参加しました。

おかげで、八王子薬剤センターの先生や、ナカジマ薬局の先生とお知り合いになれました。夜の飲み会も楽しく、めでたく酔いつぶれました・・・







演題: クラリスロマイシン・ドライシロップの熱による変性(第2報):
熱変性による溶出性の変化

所属: ワタナベ薬局上宮永店1)、大分県薬剤師会検査センター2)
氏名: ○松本 康弘1)、甲斐 理恵2)、久寿米木 洋子2)

【目 的】 
我々はクラリスロマイシン・ドライシロップ(DS)を炎天下の車内に放置すると固結化し、苦味が増すことを既に報告した*)。今回、クラリスロマイシンDS の変性をより詳細に検討するために、インキュベータで温度を制御しクラリスロマイシンDSの変性を調べるとともに、変性したクラリスロマイシンDSの溶出性を調べた。

【方 法】 
1)インキュベータでの加温:クラリシッド®DS(アボット)を1gずつグラシン紙で分包し、インキュベータの温度を50℃、60℃、70℃および80℃に設定し、7時間加温した。
2)溶出性の変化:インキュベータで60℃または70℃で7時間加温したクラリスロマイシンDSを用いた。pH5.5のリン酸水素二ナトリウム・クエン酸緩衝液および水を用い,溶出試験法第2法により毎分50回転で試験を行い、90分までの溶出率を測定した。

【結 果】 
インキュベータによる加温:60℃から明らかな凝集塊が認められた。しかし、凝集塊はもろく、簡単に崩れた。70℃では凝集塊は硬くなり、軽度の力では壊れなかった。苦味も60℃から温度依存的に増加した。
溶出性の変化:60℃に加温したクラリスロマイシンDSの溶出性は、非加熱のクラリスロマイシンDSと明らかな差はみられなかった。しかし、70℃で加温したクラリスロマイシンDSでは、溶出速度が明らかに非加熱のクラリスロマイシンDSより遅くなった。90分後の溶出率が非加熱では 96.77±3.12%、加熱群では61.41±6.98%と明らかに差が認められた(平均±SD、n=6)。一方、水ではクラリスロマイシンDSは加熱、非加熱に関係なく90分まで溶出は認められなかった。

【考 察】
クラリスロマイシンDSは60℃から変性が認められ、70℃ 以上ではその変性はより強固になった。特に、70℃で加温したクラリスロマイシンDSの90分後の溶出率は70%を切っており、溶出試験の規格に届かないという結果になった。このことは熱による変性が味だけでなく、溶出性、ひいては血中濃度変化にも影響している可能性が考えられた。今後、クラリスロマイシンDSの保管に関してはより注意を喚起する必要があると思われる。
*) 松本康弘、柴田美紀、外来小児科、p305-308,vol.10(3)、2007