★ 2008年 第19回医療薬学会(札幌) ★

★ 2008年 第19回医療薬学会(札幌) ★

医療薬学会には昨年から行きたいと思っていました。昨年の群馬は2泊しないと難しく、あきらめました。今年は札幌、かなり今回も難しいと思いました。しかし、どうしてもこの医療薬学会を制覇したい!その気持ちから、無理して出しました。午後からなら土曜日のみ休めば大丈夫と踏んでいました。

しかし、予想に反して、午前中。朝からのフライトでは無理!半分あきらめました、ただ、よくよく検討すると、前日、東京で一泊し、朝一のフライトで行けば、ギリギリ間に合います。これしかないと考え、フライトを変更しました。

当日は、ギリギリなのでともかく走りました。何とか、15分前に着き、ぎりぎりセーフ!

発表は好評でした。初めて、座長の先生からいい報告と賞賛されました。超うれしい一日でした。

演題: クラリスロマイシン・ドライシロップの熱による変性(第2報):
熱変性による溶出性の変化
○松本 康弘1)、甲斐 理恵2)、久寿米木 洋子2)
所属: ワタナベ薬局上宮永店1)、大分県薬剤師会検査センター2)


【はじめに】 
我々はクラリスロマイシン・ドライシロップ(DS)を炎天下の車内に放置すると固結化し、苦味が増すことを既に報告した*)。今回、クラリスロマイシンDS の変性をより詳細に検討するために、インキュベータで温度を制御しクラリスロマイシンDSの変性を調べるとともに、変性したクラリスロマイシンDSの溶出性を調べた。

【実施内容】 
1)インキュベータでの加温:クラリシッド®DS(アボット)を1gずつグラシン紙で分包し、インキュベータの温度を50℃、60℃、70℃および80℃に設定し、7時間加温した。
2)溶出性の変化:インキュベータで60℃または70℃で7時間加温したクラリスロマイシンDSを用いた。pH5.5のリン酸水素二ナトリウム・クエン酸緩衝液を用い,溶出試験法第2法により毎分50回転で試験を行い、90分までの溶出率を測定した。

【結 果】 
インキュベータによる加温:60℃から明らかな凝集塊が認められた。しかし、凝集塊はもろく、簡単に崩れた。70℃では凝集塊は硬くなり、軽度の力では壊れなかった。苦味も60℃から温度依存的に増加した。
溶出性の変化:60℃に加温したクラリスロマイシンDSの溶出性は、非加熱のクラリスロマイシンDSと明らかな差はみられなかった。しかし、70℃で加温したクラリスロマイシンDSでは、溶出速度が明らかに非加熱のクラリスロマイシンDSより遅くなった。90分後の溶出率が非加熱では 96.77±3.12%、加熱群では61.41±6.98%と明らかに差が認められた(平均±SD、n=6)。

【まとめ】 クラリスロマイシンDSは60℃から変性が認められ、70℃以上ではその変性はより強固になった。特に、70℃で加温したクラリスロマイシンDSの90分後の溶出率は 70%を切っており、溶出試験の規格に届かないという結果になった。このことは熱による変性が味だけでなく、溶出性、ひいては血中濃度変化にも影響している可能性が考えられた。今後、クラリスロマイシンDSの保管に関してはより注意を喚起する必要があると思われる。

*)松本康弘、柴田美紀、外来小児科、p305-308,vol.10(3)、2007