薬局新聞H29.12月号
「逆流性食道炎」という言葉をテレビや新聞などで聞くことが多くなったと思います。
逆流性食道炎は高齢者に起こりやすいとされていましたが、最近は若い人にも増えており、
問題になっています。逆流性食道炎の原因となる胃液や胃の内容物の逆流は、食事の内容、
肥満、加齢、姿勢などによって下部食道括約筋等の食道を逆流から守る仕組みが弱まったり、
胃酸が増えすぎることで起こります。
●逆流性食道炎の原因
・脂肪の多い食事、食べ過ぎ
脂肪分のとりすぎや食べ過ぎによって、何も食べていない時に下部食道括約筋がゆるみ、胃液が食道に逆流してしまうことがあります。
・タンパク質の多い食事
タンパク質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。
・加齢
年をとると、下部食道括約筋の働きが悪くなります。また、食道のぜん動運動、唾液の量なども少なくなるため、逆流した胃液を胃に戻すことができなくなります。
・背中の曲がった人
背中が曲がると、おなかが圧迫され、胃の中の圧力が高くなるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。
・肥満
日本人では、肥満と逆流性食道炎の関係を示すデータがないので、はっきりしませんが、肥満の人は、逆流性食道炎の原因のひとつである食道裂孔ヘルニアになりやすいことが分かっています。また、腹圧が上がることで、逆流しやすくなるともいわれています。
●逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎では胸やけのほかに、呑酸(どんさん:酸っぱい液体が口まで上がってくること)、ゲップ、胸痛、咳、のどの違和感、不眠などさまざまな症状がみられます。しかし、なかには食道に炎症が起こっていても、あまり症状を感じない方もいます。
●生活上の注意点
・食生活の改善
脂肪分やタンパク質の多い食事、チョコレート・ケーキなどの甘いもの、みかんやレモンなどの酸味の強い果物、消化の悪い食べ物などはとる量を減らしましょう。一度に食べ過ぎずに、腹八分目を心がけましょう。
・姿勢に注意
前かがみの姿勢を避けましょう。寝る時は、少し上半身を高くして寝ると、逆流が起こりにくくなります。食後3時間くらいは、胃の内容物の逆流が起こりやすいといわれています。食後すぐに横になったり、寝る前に食事をとることは避けましょう。
●薬物療法
治療薬として主に「胃酸分泌抑制剤」、「消化管運動機能改善剤」が使われます。
・胃酸分泌抑制剤
胃酸の分泌を抑える薬で、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2ブロッカーなどがあります。
プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、胃壁の酸を作るプロトンポンプに直接働いて胃酸の分泌を抑える薬で、現在最も強力な胃酸分泌抑制剤です。
・消化管運動機能改善剤
食道の運動をよくする薬で、逆流してきた胃酸を押し戻す働きを高めます。