ARBが心房性細動には無効
久しぶりの論文です。
NEJMにちょっとがっかりな論文が載っていました。
心房細動にはアップストリームとダウンストリーム治療があります。アップストリーム治療の代表がARBです。
今回のNEJMではイルベサルタン(イルベタン、アバプロ)が心房性細動のリスクを下げなかったと、報告されました(http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008816?query=featured_home)
■方法■
脳卒中のリスクがあり、収縮期血圧が110mmHg以上の患者さんにイルベサルタン(300mg/日)またはプラセボを投与しました。
これらの患者さんは既に患者さんは既に別の2つ治験の内1つにに登録されています(治験はアスピリンとアスピリン+プラビックス併用または経口抗凝固薬)。一次エンドポイントは脳卒中、心筋梗塞、血管由来の死亡です。二次エンドポイントは前者と心不全による入院に割合です。
■結果■
9016人の患者が登録され、平均4.1年間フォローアップしました。
血圧下降は収縮期血圧で2.9mmHg、拡張期血圧で1.9mmHgでした。
一次エンドポイントの脳卒中、心筋梗塞、血管由来の死亡は両群とも5.4%(ハザード比は0.99)で、差はありませんでした。
二次エンドポイント(脳卒中、心筋梗塞、血管由来の死亡+心不全による入院)の割合はイルベサルタン服用群で7.3%、プラセボで7.7%でした(ハザード比は0.94で、有意差なし)。心不全による入院に限ると、イルベサルタンは2.7%にたいしてプラセボは3.2%で、こちらも差がありませんでした(ハザード比は0.94)
洞律動(正常なリズムで脈打っている)の患者さんで、心房細動が原因入院または12誘導での心房細動の発症では、イルベサルタンは何らメリットがありませんでした。また、電話での聞き取り調査でも、イルベサルタンのメリットは見出せませんでした。
ただ、イルベサルタン群の方がプラセボより収縮期血圧性高血圧(127人vs64人)、腎不全(43人vs24人)と多かったようです。
■まとめ■
イルベサルタンは心房性細動の患者さんの心循環系のイベントを抑えることはできませんでした。
ただ、患者のバックグラウンドに少し難ありかなと思います。こういうバックグラウンドの差でも結果に影響するかもしれませんし・・・