早期ホジキンリンパ腫には化学療法単独の方がいい

悪性リンパ腫は、白血球の中のリンパ球が悪性化したがんで、全身のリンパ節が腫れたり、腫瘤ができたりする病気です。リンパ球とは、体内への侵入物から体を守る免疫の働きを担っている細胞です。この悪性リンパ腫には、大きく分けて「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があります。これは、生検し、その組織を顕微鏡で見て分類します。ホジキンリンパ腫は、基本的にリードーシュテルンベルグ細胞やホジキン細胞など、特徴的な大型細胞が認められることで診断されます。

悪性リンパ腫は、わが国では、年間10万人あたり7~8人に発生しますが、そのうちホジキンリンパ腫は約10%程度を占めます

と、国立がん研究センターの「がん情報サービス」に書かれています。

このホジキンリンパ腫、早期は一般的に放射線治療+化学療法という方法がよく使われているようです。しかし、長期の治療に伴う二次性のガン等が問題となっています。

この二次性のがん放射線の関与がかねてから言われており(このため、単独で放射線治療されることは少なくなったようです)、放射線をやめて、化学療法だけのトライアルがNEJMに記載されていました。

■方法■
ホジキンリンパ腫(ステージⅠAまたはⅡA)の患者405人に「ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法」単独または放射線療法を組み合わせた治療、さらには放射線単独療法の3タイプを行った。

ABVDのみのグループでは、リスク因子の少ない多いにかかわらず、4~6コース行った。放射線治療を行った群ではリスク因子が少ない患者には放射線治療のみを行ったが、リスク因子が多い場合はABVDを2コース行った。

一次エンドポイントは12年後の生存率です。

■結果■
12年の生存率はABVD治療群では94%でしたが、放射線治療群では87%となり、ABVDのハザード比は0.5と明らかに生存確率はABVDのほうが高くなりました。

しかし、ガンが進展しなかった割合(freedom from disease progression)はABVDで87%、放射線治療群では92%と、進展でみるとABVDのハザード比が1.91と悪くなっています。

亡くなった内訳は、ABVD治療群ではガンによる死亡が6例、それ以外の死亡が6例でした。一方、放射線治療では4例がガンによる死亡で、20例がそれ以外の原因でした。

それ以外の原因は、①二次性のガン(second cancers )や②心臓のイベントによるものでした。

■まとめ■
確かに、放射線治療を組み合わせるとがんの進展は抑制できますが、逆に生存率は下がるという皮肉な結果になりました。

5年生存率では差がそれほど見えないのですが、12年生存率では際立ってくるようです。

ということで、ホジキンリンパ腫の早期では放射線療法も害だおライには載っていますが、抗がん薬の単独治療の方がいいことが明らかとなりました。